概要
今、丸岡町の中心部、東陽2丁目の中央商店街に葬祭場を建設する話が持ち上がり、反対運動が始まっています。中央商店街は20年程前に新たに道路ができてから形成された、比較的新しい商店街で中規模のスーパー2軒とドラッグストア、ホームセンターと家具屋、本屋、クリーニング店に持ち帰りのすし屋さんなどが東西約300mの中で隣接して営業しており、普段の日でもかなり買い物客を集めている元気な商店街である。この商店街の東には県立の丸岡高校があり、ほとんどの生徒がこの商店街を通学路としても使っている他、西へ向かうと役場、国道8号線へ繋がる東西の主要道路としても主要な道路でもあります。葬祭場が計画されているのは、その商店街のほぼ中央に位置していた衣料品中心とした店舗の跡地約500坪です。
反対する人たちの主張は、葬祭場は町民にとって必要な施設であることは否定しないが、葬祭場がお通夜などで営業(?)する夕方は、買い物客や通学する生徒で混雑が予想され、商店街にとっては受入れることはできないというのである。
確かに人や車があふれて混雑しているなら賑やかで買物する気持ちも弾むかもしれないが、夕方の食事を買いに行ったら、「弔」と書かれた花輪が並び、黒一色に人がたくさん居ると、購買欲も食欲も失せてしまうのは正直なところかも知れません。
法的な制限
町議会の議員さんも協力しているようですが、不動産業者の専門的な分野からこの問題を考えてみたいと思います。
まずは葬祭場の建設に関連する法的制限から検討した場合、都市計画法には12分類された用途地域というものが定められており、地域や地区毎の環境を保全するため建築する建物の大きさや高さなどの制限がされており、建築基準法の中では、さらにその建物の用途に関する制限を定めています。今回問題となっている中央商店街はその区割りの中でも、比較的どのような用途の建物でも建てられる「準工業地域」に属しており、建てられないのは「個室付き公衆浴場」と「危険性が大きいか又は著しく環境を悪化させるおそれのある工場」「火薬類、石油類、ガス等の貯蔵、処理の量が非常に大きい施設」この3例だけなのです。よって、法的に規制は加えることはできない地域です。用途の例示の中には「葬祭場」というがないため、お通夜のときに宿泊するための設備があるため「ホテル・旅館」と考えた場合でも、食事を提供する「飲食店」と考えても「演芸場・観覧場」の類とみなした場合でも、この「準工業地域」で建築できる建物となっているのです。よって、法的に葬祭場の建設を阻害するものは他になく、建物の大きさや高さの制限内の建物であれば、役所は建築を認めざるを得なくなるわけです。
不動産業者のモラル
不動産業者の立場から言えば、業者は営利目的で経営し儲けることに努力しているわけですから、その土地の売買が成り立たせることは目的に沿った通常の営業であることには間違いはありません。ただ、その土地で新しい店舗や工場を作った場合、その場所が果たしてその店舗や工場に最適な場所なのか、便利の良い立地なのか、周辺環境はどうなのかの判断をお手伝いする立場でもあるわけなのです。居住用の場合でも同じような立場であるのですが、住宅の場合などはそこに住む人が「ここが良い」と思うのであれば、その土地の条件だけを詳しく説明するだけで住むわけなのですが、事業用の場合はそういう訳に行きません。反対運動が起こることが目に見えているような場所を勧めること自体、同じ不動産業者にとして今回の問題は業者の見識、モラルを疑う一件であり、いわゆる儲けることばかり考える「不動産屋」にも、責任があるのではないかと考えます。業界全体のレベルアップが望まれるところですが、儲けている会社=立派な会社という認識が社会全体を歪めているのかもしれません。勉強ができれば立派な生徒という歪んだ教育認識と共通するのかも知れません。
葬儀社の立場から
話題が横道にそれましたが、今度は葬祭場を運営する会社の立場から考えて見ますと、お通夜の横で「いらっしゃい」の言葉が聞こえたり「大売出し」の音楽が鳴っているのでは葬儀社も困ってしまうのではないでしょうか。お通夜へ行ってもが買い物客で道路が混雑しているのでは参列者も大変です。亡くなった方の喪主や親族にとっても、最期くらいは静かに淀みなく葬送したいのが心情でしょうし、そのような騒がしいところで故人を見送りたくはないと思います。葬式自体を忌み嫌うものでなくても、葬式を行う場所は、ある種清々と厳粛な雰囲気をかもし出す環境が必要なのではないかと思います。
また、実は当社の隣と斜め前には寺院があり、月に1回程度は葬儀が行われます。前の道路は県道で、片側だけが駐車禁止になる道路なのですが、先日、某葬儀社により隣の寺院で葬儀が行われている際、片側にその葬儀社のトラックが2台、参列者の車が2台駐車しているにもかかわらず、その葬儀社の霊柩車とバスが反対側に駐車してしまいました。これでは、車の行き来ができなくなり、すぐに渋滞が始まりました。私は葬儀社の方に、「両車線塞いでしまったら車がすれ違いできないでしょ、早くどちらか動かしなさいよ」と言ったところ「葬式の霊柩車だから仕方ないでしょ」と驚いた返答が返ってきました。私の会社の社員の車は別の場所に駐車させたりしてなるべく前の道を空けようと配慮しているにも関わらず、事前に一度も挨拶もなく、「葬儀は特別扱い」とも言わんばかりの行動を取る葬儀社もおられるのです。モラルがないのは「不動産屋」ばかりでなく「葬儀屋」もかなり程度が低く見られる職業みたいで自戒の念に耐えません。情けない話ですが、今回の問題は、モラルの低いこの2業種が引き起こしたと言っても過言ではないようです。
閑話休題
もう一つ葬式のお話ですが、お隣韓国では病院の中でお葬式を営むことが多いというのです。命を救うための病院の中に式場が用意してあり、霊安室から同じ建物の中で移動させてお葬式も済ませるのは、合理的であることから韓国ではかなり広まっているとのことですが、日本にはなじまないかも知れません。ただ、この日本のお葬式のスタイルもここ数年で非常に変わってきたのも間違いありません。大きな都市へ行きますと大きな式場があって、入口が逆向きに2箇所あり、西から入ると結婚式場、東から入ると葬儀式場となっているのです。建物の各階には真ん中にホールがあって、そのホールを結婚式場に使う場合は西側の入口を使って賑やかに、葬儀式場として使う場合は結婚式の時に新婚さんの背中側の金屏風の裏に隠したドアを入口として使い分けるそうです。結婚式は大安や土日が多いのですが、平日は閑散としてしまいますがお葬式は平日でも多いことに着眼した商魂のなせる業かも知れません。
さいごに
丸岡に計画中の葬祭場も周辺の商店街には十分に配慮をした建物にするのでしょうが、出入りする人や霊柩車まで見せずにお葬式はできないでしょう。このような反対運動が起こっているにもかかわらず、建築したとしても結局利用するのは、丸岡町内に住む人たちなのです。もしも私が葬儀を行うときには、反対運動を行った人や周辺商店街にご迷惑をお掛けすることを避けるために違う場所を選ぶことになるのは間違いありません。