社長のブログ

町内会でのソバ会 (12/2)

私の住んでいる坂井市丸岡町はあまり有名ではありませんが、知る人ぞ知る?蕎麦の産地で、全国の有名な蕎麦屋さんを特集した雑誌などでも、使用するそば粉の産地で「福井県丸岡産」とか書かれているのを見たときがあります。
蕎麦は8月に稲刈りが終わってから種を蒔きますが、育つのが早く10月には白い花が咲き、約80日で収穫できるので例年11月後半には新蕎麦が味わえる季節になります。食べるものは総じて獲れだちがうまいのが通例で、蕎麦もやはり新蕎麦は香りが強くおいしいことから、私の住む町内会では例年この時期にソバ会が開催され新蕎麦を味わっています。
農地を多く所有している集落の仲間で行なうソバ会は各所で開かれていますが、猫の額程度の家庭菜園以外に全く田んぼも畑もない私の町内で、それも町内会単位でソバ会を行っているところは珍しいのではないかと思います。


まずは蕎麦打ちですが、例年、会場は町内のお菓子屋さんの厨房をお借りして約15名ほどが集まり、水回しから練り、伸ばし、切りをみんな自分たちの手でこなしていきます。町内には蕎麦道場でかなり腕を磨いてきた人もいれば、自分が食べるだけを趣味で打っている人、このソバ会だけで練習している初心者もいて、わいわいガヤガヤ、練るだけ練って伸ばしを失敗して途中で打ち手が交代したり、蕎麦を切る太さもマチマチですが、それは町内会での手作り行事と言うことで、色々な蕎麦が出来上がるのも楽しみの一つとしているところが良いところです。
それと、蕎麦打ちは1時ごろから始まり、ソバ会は夕方6時から開催するのですが、蕎麦打ちのお手伝いをしている人の楽しみは、最初の打った蕎麦はその場で茹でて食べる楽しみが味わえること。一升瓶の冷酒を茶碗で1杯飲んで、打ち立て、茹でたての蕎麦の味は格別です。



「蕎麦打ちはこの水回しが大事なんだよね」とか
「やっぱりそば粉10割がうまい」
「いやノドごしはニハチ(そば粉8割つなぎ2割)がうまいよ」とか
薀蓄(うんちく)を語りながら、そば粉全体に水を含ませ、それから練っていきます。
この日はどこかで採ってきた天然水まで用意されていました。


ところで、丸岡の大宮亭では最近「早刈り蕎麦」が出されるようになりました。
これは、3年ほど前に台風で畑の蕎麦がうまく育たずに、早めに刈り取ってしまわなければならなくなり、少し緑の葉が残っている時点で収穫してしまったところ、例年花が咲いた後、完全に枯れる前に収穫した蕎麦と比較して、香りが強くて栄養分も勝ることがわかり、今年は敢えて早めに収穫した蕎麦を出すようになったとのことです。
ただ、蕎麦が完全に枯れてない状態で刈り取るには機械が詰まりやすいとか、脱穀などにもこれまでにない苦労もあったとのことなのですが、台風での被害から新たなブランド蕎麦ができあがったことで、災い転じて福になっている感じだということです。多分昔の人は、蕎麦は枯れても倒れにくい植物なので、なるべく枯らしたまま乾燥させたほうが、蕎麦の実も取り出しやすくそば粉に仕上げやすかったので、なるべく遅くまで刈り取らなかったものだと思います。


出来上がった蕎麦はご覧の通り、お饅頭を載せる台に綺麗に並べられますが、太いのあり細いのありですが、食品の偽装問題が取上げれている今、正真正銘の打ち立ちの蕎麦です。
蕎麦打ちに使う道具も、町内の人たちの個人の持ち物の寄せ集めで、練り鉢も大小さまざま、伸ばしに使う棒も太いのから細いのまでが揃い、包丁に至っては8本ほど並んでいて、道具の品定め会場でもあります。



午後1時から始まった蕎麦打ちは13キロのそば粉を使用して午後4時にはすべて蕎麦になり、それから一旦お菓子屋さんの厨房で茹でて、ソバ会の会場で、温め直して食べることとなります。ソバ会の会場は町内のお寺の御堂で、机を並べ蕎麦を温めるプロパンガスと大きな釜を持ち込み、お酒やビールが振舞われ約40人が集まりました。
出来上がったそば約170人前は、町内のお年寄りの家にも出前され、会場ではお酒約4升、ビール30本、刺身6皿、オードブル6皿とともに、にぎやかな集まりの中ですべてお腹に入って夜8時ごろ終了しました。(これで大人一人1500円は安い!)