不動産取引のお役立ち情報

住居表示と地番の話

新しい土地を買ってそこに家を建てた時、その家の住所は誰がどのように付けるのか、皆さんご存知ですか?

住民票を移転する際、新しい住所は申請者が記入しますが、受付の役所の方はその住所に建物があるかどうかまでは確認しません。つまり申請者が書いた住所が新しい住所になるのです。

土地には住所と違って、一つ一つの土地は「所在」という欄に所在地とその下に「地番」という番号が振り分けられていて、その場所を確認する際に見る地図が「公図」なのです。では、その土地に新しい建物を建てると、土地家屋調査士が建物が建っている土地の所在を調べて、建物ごとに家屋番号という番号を振り当てます。建物の登記書面を取る際にはこの所在地が必要とあります。

一般的に土地の所在や地番は、都市部では「△△○丁目○○○番」という表記が一般的で、郊外やいわゆる田舎に行くと「△△○字××× ○○番」という表記になり、○○という集落名の後の字番号の後に×××という小字名まで記載されています。

ここまで不動産の土地や建物の地番の話ですが、建物が建った後は住居表示法が施行されている地域か否かによって、住居の表示が異なります。住居表示法が施行されているでは市町村では、「△△○丁目○番○号」と表示されて、数字通り家が並んで連なっており、郵便配達の方も非常にわかりやすくなっています。ところが、この住居表示法が施行されていないところは、前述の「地番」をそのまま住所として使用しているため、3番の隣が4番でないことが多いのです。
そこで、住居表示と地番についてもう少し詳しくお話します。

まずは住居表示法が施行されている地域
福井県内では福井市・鯖江市・あわら市の金津・坂井市の三国などの市内は施行住居表示法という法律が施行されていて、市役所へ家を建てたことを届けると、そこの家は「△△○丁目○番○号」ですと、決められた住居表示が振り分けられる仕組みになっています。
これが行なわれているほとんどの地域は区画整地が終わりキッチリした道路で囲まれた1ブロック(街路)が区切られているので、そのブロックごとに1番2番…、そしてそのブロックの角の家から1号、2号…と順番に振り分けられるようにあらかじめ決められています。この○番や○号はどこから1番となるのかは、原則としてその市の市役所に近い方から、これも原則として時計回り(道路の広さなどで変る場合もあります)で振り分けられています。
ここで疑問なのですが、角に1号の家が建っていて、角から空地を挟んで少し離れて家を建てた場合、その家は2号になるのかというと、そうではありません。仮に2番としてしまって将来その空地に家が建ったら、その家の住所は1号と2号の間?になってしまいますので、空地は約10m間隔で家が建つことを想定して、30mの空地があると、2~4号を確保しておいて5号と定めるようになっています。
○丁目○番○号と住居表示法による「住所」がある場所は、郵便も届きやすくて家を見つけやすくする位置を示す意味があるのですが、不動産を売買する時にはその家にも土地にも「地番」という別の番号が決められていますので、その地番がわからないと登記簿も調べることができません。最近は、下の地図のように、地番入の住宅地図が出ていますのでこれが便利です。
住居表示法の施行区域地図の例

具体的に説明すると、大手3丁目4番1号(住居表示)にある福井放送会館は、大手3丁目501番~504番と508番509番の地番の土地の上にあることがわかります。大きな建物の敷地は一つの土地ではなく、このように大小の土地(地番)が存在することは珍しくありません。
そして、放送会館のすぐ隣にある住友生命福井ビルの住居表示は、4丁目4番7号となっていることがわかります。大手3丁目4番2号から6号は抜けています。これは将来、細かく建物が5棟建つことが考慮されて番号を振り当てているからです。


次に住居表示法が施行されていない地域
私の住んでいる丸岡もそうなのですが、住居表示(厳密に言うと住居表示法による住居表示)がされていない地域で家を建てた場合は、その家の建物の地番がそのまま住所になってしまうのです。そこで、これは特に法律で決まってはいないと思うのですが、「△△○字××× ○○番」という所在にある建物は、「△△ ○号○○番地」という表記にすることが一般的です。×××という小字名まではほとんど記載しないで住所の届け出をしているわけです。
このように住所を決めていく訳ですので、その地番が順序良くある規則により並んでいれば問題はないのですが、区画整理の行なわれていない郊外の土地の地番は、そもそも明治の地租改正のときに年貢を納める面積を調べるために付けられた番号がそのまま生きていますので、一定の法則で順序良く付けられている訳でもなく、土地の形もひょうたん型もあれば、三角の地形などもあり、更に戦後に新たに道路が敷設されたりすると、それはもうジグソーパズルのような土地も沢山出てくるのです。
そこに家を建てると、土地も1つの地番ではなく3つも4つもの地番の上に家が建つ場合も少なくないのですが、そこの住所はどうして付けるのかとなると、敷地の中で一番面積が大きい地番をそのまま住所にする人もいれば、玄関がある地番を住所とする人、道路に面した地番を住所とする人もいるため解りにくくなるわけなのです。
さらに、明治の初めにには、家を建てた人や土地を耕作している人が住んでいた集落の地番をその土地に振り分けた経緯(もう少しわかりやすく説明するとA村の太郎兵衛がB村の中に田んぼを作っていたら、その土地はA村の村地としてA村の○○字○○番と地番が付けられたこと)もあって、隣同士で道や川を挟んでいないのに、住所の町名(大字)までが違うようなことも良く見受けられるのです。
このような昔から付けられていた地番もややこしいうえに、現代でもその上に住宅を建てた場合でも地番の表示法が定められていないため、隣が10字15番なのに、うちは12字の30番なんてことも良くあるのですが、これら隣り合った土地同士なのに土地の区画の図面を探そうとすると、それが町名(大字)や字番ごとの図面であるため、色々な図面を貼り合わせないと一体の図面が表示できないのです。
ややこしい公図の例

家や土地を売りたいといわれたとき、大変なのは実はこういう土地にめぐり合ってしまった時なのです。
地図をクリックすると大きく見れますが、公図の所々が歯抜けになっていて「地域外」と書いてあります。
地区外とはこの公図とは違う字番の土地が存在しているということで、この歯抜けの場所の字が何字かを探すのがなかなか難しい作業のです。


地番から1つの土地は見つけられても、その土地の隣接地が何なのかわからないこういう時には、かなりの時間と労力、そしてこれまで培ってきた勘を頼らないと隣の土地の図面や地番が出てこないのです。
市役所などで調べればすぐわかると思われるかもしれませんが、市役所の担当のところへ行っても、こういう字が入り組んでいる場所があること自体を不思議がっているだけで、時間の無駄になることが多いようです。
やっと見つけた歯抜けを埋める公図

これが、上の公図の「地区外」を埋める公図。今回のケースでは字番どころか、ナント住所の字名(町名)まで違っていた。
この地図で言うとA市B(集落名)町5字7番の土地だけが、A市C(集落名)町20字17番と14番の間に挟まっていたということになります。(説明していてもややこしくてわかりづらいですね。トホホ)


このように丸岡でも住所が入り組んでいるところがいっぱいありますが、福井市では地震や戦災で登記簿や公図自体が焼けたり紛失したりして、公図や登記簿が存在しない場所などもありました。
そういうところは地道な調査などで再製しているところもありますが、公図も存在しているけど、ややこしい場所はやはり行政が字名変更などを行い、できるだけわかりやすい住居表示になるようにしていただけたら助かるのですが、こんなご時世、とても無理な話でしょうね。

上の公図を合成すると

これは上の2つの公図と更にもう1枚の公図を合成した土地の位置図的なもの。
青・赤・緑ともに違う町名が入り組んでいるとても特殊な場所ですが、良く似たケースがあっちこっちであるのです。