社長のブログ

上手な発注依頼

先日、弊社で入居者を決めさせていただいた倉庫付貸家の話です。
この建物の所有者の方は、賃貸物件にして家賃収入を得るために、建築後かなり傷んでいたこの建物を購入されてから自分なりに考えて、改装、改修工事をある工務店に発注しました。私は改装の前の状態も見ていたのですが、その後相談もなく、改装が済んだので一度見て欲しいと言われて、中を見にいったのですが、台所が狭く、その横の和室が2間続きの間取りはほぼ同じで、どういうわけか、トイレが洗面所のスペースの半分をつぶして移設されていました。
そして今までのトイレの場所には洗濯機置場が作られ、工事費はざっと200万を超えていることは想像できましたが、どうせそれだけのお金を掛けるのなら、もっと優先する改装があったのに…と思われる改装でした。
この改装計画はどのように決まったのか、その所有者にお伺いしたところ、トイレの場所の移動を含めた改装を自分で決めて、そのまま工務店に伝え、工務店は言われたことをそのまま実行してくれた、との答えでした。
私としては、どうせ改修するなら、トイレの場所は変えずに、台所横の和室を食堂にして、できればその横の続き間の和室も洋室のリビングに改装した方が、今の時代のニーズに合っていたと思ったのですが、それはもう後の祭りで、入居者募集を始めました。
早速、入居を募集の看板を見たお客様を案内したところ、案の定、台所横に食堂、リビングがない点を指摘を受け、これらを再改修してもらえるのなら契約したいとのことでした。倉庫付の少し特殊な物件であったため、結局、改修した和室を再度取壊してリビングダイニングに再改装することとなりました。

これと良く似た事例が、先日、私も所属するある会の旅行でも起きました。
総勢18名で、2泊3日で長崎まで行く旅行なのですが、会の担当者が大阪か名古屋から飛行機で行くことを前提に日程を組むよう旅行会社に依頼したため、旅行会社はそれ以外の交通機関を調べることなく日程を決め、チケットの手配まで済んでしまいました。
その後、よくよく調べると、JR西日本パスを利用すれば、行き帰りともグリーン車使用で飛行機利用に比べ、費用は約3分の2、現地でのアクセスも良い旅程があることが判ったのですが、これも後の祭り…。

この2つの事例の共通点は、すべて最初の依頼の仕方にあります。
自分なりにあまりに安直に調査もしないのに、具体的な指示を出しすぎて、受注者がそれにこだわってしまったのです。
貸家にしたいのだけど、どのように改装すれば、入居者が決まりやすくなるのか、費用も安くつくのか、設計、企画段階からその道のプロと言われる人たちに相談するべきだったと思いますし、旅行の事例にしても、長崎のこの場所に何時までに行きたいので、安くて、体も楽な日程を考えて欲しいと旅行会社に注文すれば、色々な日程案が提示され、そこから選べば良かったと思われます。
しかし、もう一歩踏み込んで考えると、受注を受けた工務店や旅行会社は、発注者が考えた改装案や日程案が「なぜそうなったのか」と、もう少し親身に一緒に考えようと努力はできなかったのか、プロなら、そこまで踏み込んだ対処ができなかったか疑問に思えます。
また、どの職業でもそうだと思いますが、まずは仕事をもらうことが第一であるため、お客様の具体的な希望に対して、あまり余計な詮索や他の商品などを勧めると、お客様の仕事自体がなくなって心配があります。そのような危険を冒すよりも、言われたとおりの商品だけを提供するというのも一つの営業手法であるのかもしれません。
どちらが悪いかは別にして、仕事を頼む際には、素人があまり勉強もしないで、発注する時にこうしろ、あーしろと具体的に指示するよりも、多少勉強したとしてもプロならどんな企画案を提示してもらえるか、自分の希望だけを伝えるやり方が、良い結果を生むことも多いのではないかと思います。
昔から「もちは餅屋」って言う言葉がありますが、餅屋に餅を注文する場合でも、単に「丸餅を○個」と注文するのではなく、「正月に久々に会う大切な友人○人と、昼食で食べたい餅」と言って注文する場合とは、相手が本当のプロなら、良く考えてくれると思うのですがどうでしょうか?