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更新料の裁判

私どもが定期購読している「週間 全国賃貸住宅新聞」の8月6日号によると、京都で賃貸住宅の更新料の全額返還を求めた訴訟が起きている。

この新聞の抜粋は以下の通りです。
 今回の裁判は賃借人が賃貸人に1、2年ごとに支払う「更新料」は不当な契約だとして、京都市内在住の男性が京都簡易裁判所に訴えたもの。男性は全面支援を行う京都敷金・保証金弁護団(団長:野々山宏弁護士 他12名)とともに過去5年分の更新料50万円の全額返還を求めている。更新料がこれまで貸主側で定義付けしてきた「賃料の補充」や「更新したことによる地位の対価」として見なすことはできないというがその理由だ。
平成12年8月、京都市北区の男性は月額家賃4万5000円で賃貸借契約を結び、マンションに入居。契約書には「更新の可否を申し出ない限り(契約は)継続され更新料を支払う」とあり、男性は18年11月に転居するまで、5回にわたり合計50万円の更新料を支払った。
原告側は「更新料は賃貸人が地位や情報力、交渉力の格差を利用し、賃借人に一方的に押し付けてきた慣行で、更新料支払条項には合理性がない」と主張。その上で「この条項は消費者の利益を一方的に害しており、消費者契約法第10条により無効」として返還を求めた。
これに対し、被告側の家主は財団法人日本賃貸住宅管理協会京都府支部の全面的な支援を受け対抗することを表明。貸主側の弁護で多くの実績を持つ京都府下の弁護士11人が参加する「貸主更新料弁護団」(団長:田中伸弁護士)が立ち上げられた。
「消費者契約法の施行以来、原状回復特約や敷引などこれまで維持されてきた制度が無効だとの判断が大勢を占めてきましたが、今回の更新料問題については法を極端に拡大解釈したものだと言わざるを得ません。借主は賃貸借契約に基づき5年間にわたり『合意更新』を行い更新料を払っていたにもかかわらず、退去後に不当だとするのは契約上の信義にもかかわる問題です。また貸主は更新料を収入として税務上の手続きも終わっているため、返還請求が認められるようなことがあれば経営の維持すら困難になってしまいます」(田中伸弁護士)。
貸主側の弁護団は「この問題は業界全体、あるいは今後の賃貸事業そのものに大きな影響を及ぼしかねない」とし、6月5日に京都地方裁判所への移送を申し立て、6月8日に移送が決定した。
「この種の裁判が簡易裁判所でなく地方裁判所で争われるのは異例のケース。しかも101号大法廷、第4民事部合議部で行われることが決まっており、最上級の案件として取り扱われています。裁判所としても本件については重大案件として考えているようです」。
第1回公判は京都地方裁判所第101号法廷で8月7日午後2時から行われる。原告、被告ともに10名を超える大弁護団を組織しており、裁判の行方に注目が集まる。(8月6日号)

現場で賃貸契約を行っている者の立場でこの問題を解釈すると
契約時に説明がなかったとか理解できなかったという手続論ではなく、更新料そのものを否定する裁判であることなのですが、そうなると「礼金」も非常にあいまいな解釈のもとで授受されている金銭であり、これらの問題の根底にあるのは
家主や不動産業者が、契約の任意性を利用して、できるだけ安い家賃のように見せかけて、定期的に多くの収入を確保しようと安易に考え出した結果ではないかと感じています。(歴史的に築き上げられた日本独自の契約で良かった点もたくさんあるのですが、高度成長以来、エゲツナイ一部の家主や業者に次第に感化されていった面も否定できないが…)
私独自の理論で言えば、(極論かもしれませんが)入居時には敷金と仲介手数料だけ、賃貸中は家賃・共益費以外受領してはならない、と規定してしまえば、家主や不動産業者は更新料収入や礼金収入を家賃に上乗せして家賃を設定することとなり、これらの問題は発生しなくなり、入居者は家賃と敷金だけで物件を比較できることとなり、公平な競争が生まれ、賃貸業界ももっと成熟して行くものと思っています。
私の更新料に対する考え方は「家賃だけの比較では判らない賃貸の話(更新料)」にも記述してあるとおりですが、福井県下でも賃貸事業そのものの収入や不動産業者の手数料を如何にして上げようと考えて、家賃設定は変えずに更新料や礼金の規定を追加した業者や家主が大勢いるわけで、このような安易な考え方にメスが入ったほうが今後の不動産業界には良いのかも知れないと感じています。